コミュ障患者を食い物にする本。

 

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脱コミュ障の本が、兄の部屋に置いてあった。本のタイトル【会話がとぎれない!話し方66のルール】。兄が購入したのか、はたまた兄が誰かからもらってきたのかは分からない。いずれにせよ、この破壊力抜群のタイトルが私の好奇心を揺さぶらないはずが無かった。重度のコミュ障である私は藁にもすがる思いで小刻みに震えながらこの本を手に取り、目次に一通り目を通す。その瞬間私は新たなる世界への扉を開き、今後の人生に爽やかな風が吹き抜けるのを直感した。

 

【「話題選び」はコレでバッチリ 相手がどんどんノッてくる気持ちの”ちょっぴり”オープン術】

【気持ちを尋ねるからイメージが広がる 話が一気にあふれ出す「質問」のツボ!】

 

なんだ、なんなんだこれは、スゲぇ。目から鱗がボロボロ出てきやがる。どうして学校でコレを教わらなかったのだ、私は一体これまで何をしてきたのだ、呑気に因数分解とかやってんじゃねぇよ。因数分解が私のこれまでの人生を、一度でも豊かにしてくれたことがあっただろうか、いや、無い。あるはずが無い。因数分解よりも【会話がとぎれない!話し方66のルール】の方が100億倍私の人生を豊かにしてくれるはずだ。しかもこの一冊で本体価格1400円+税!?安い、安過ぎる。破格の値段!価格崩壊!!まさに最強!最強のバイブル!

それにしても、とぎれない会話に66個ものルールがあったなんて……【脱コミュ障なんて超ラクチン!3ステップ】とか【コミュ障を克服するたった1つだけの方法】とかを期待していた私が愚かだった。どうやらコミュ障患者である私自身が、脱コミュ障の難解さを見誤っていたようである。

『66』。脱コミュ障のためには少なくとも『66』のルールに従わなくてはならない。そういうことか、なるほど。相手と顔を合わせ相手が発言したその瞬間、頭の中で記憶していたこの66のルールを頼りに、自分の発言を一つ一つ照らし合わせながら会話をしていくと、そういうことか。しかもこの本、誰とでも、15分!?15分以上も会話が途切れないというのか。ヤバイぞ。これはヤバイ本を見つけてしまった。

 

 

 

 

しかし私は、ヒッチハイクをしてもコミュ障が治らなかったという苦い過去を持っている。何百回とヒッチハイクを重ねあらゆる人と会話をしても、コミュ障が治るどころか、コミュ障であることの自覚がより一層自分の中に深く染み込んでいくだけだった。コミュ障とはもはや私のことであり、私とはすなわちコミュ障のことである。いいじゃん。だったらもうそのままコミュ障で良くね?お前はもう頑張ったよ。私は、コミュ障を治す必要は無いのだと悟った。それを自らに言い聞かせた。コミュ障の私が、ありのままの私なのだと。私は、私のままでありたいんだと。

 

しかし、ひとたび 【会話がとぎれない!話し方66のルール】なんていう本を見つけた時には興奮せずにはいられなかった。食い入るようにページをパラパラとめくった。本当は、私は変わりたいのかもしれない。このままいつまでもコミュ障をやっている場合ではないのかもしれない。コミュ障なんて治す気ねぇしとかなんとか言っておきながら実はコミュ障を治したくてたまらない系のそれ。思春期の子供に潜む天邪鬼な性質が、ひょっこり顔を出したのである。

 

【会話がとぎれない!話し方66のルール】

 

この本がきっと、私の中の天邪鬼を消し去ってくれるはずだ。他力本願。私ができることはやりつくした。だったらもう他力本願だ。

 

この本一冊で、私はっ、コミュ障をっ、治して見せるぅぅぅぁああああああああああああああぅぅっあああh

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってやっぱ66個は多すぎると思う。シレっと『66』言うてるけど冷静に考えて66個は多い。