ヒッチハイク中に職務質問を受け、取り調べ室まで連行された時に心得ておくべき3つのこと。

私は大学の講義を抜け出して、12月から3月までの約3か月間ノープランヒッチハイク旅に出ていた。

ホワイトボードには方角のみを記入し、目的地はドライバーさんに任せるという、それはさながら記憶喪失患者によるあまりにも唐突な無賃乗車。

 

ノープランヒッチハイク旅をしてみると、毎日が予測不可能な面白い事の連続で、悲惨なハプニングに苛まれることもあったけれど、我ながら最高の旅が出来たように思う。

 

ありがたいことに、車に乗せてくれた人や通りがかりの人などが、食料や現金、日用雑貨までありとあらゆるものをプレゼントしてくれるために、いつの間にか私は大量の頂き物を持て余すようになっていた。

 

それらを一人で独占してしまうのはなんだか面白くないなと思った私は、勝手にそれらをビニール袋に入れては、勝手にそれを『シェア袋』と命名し、勝手にそれらを乗せてくれたドライバーさんとシェアしていくという奇行を繰り返すようになった。

 

 

これがそもそもの発端である。

 

 

1・何気ない、それは至って普通の職務質問から始まった

 

次第にそのシェア袋の力はどんどん勢いを増していき、気付けばハーモニカや歯間ブラシ、十得ナイフや腐敗した本、使用済みの笛などなど、そのバリエーションはエスカレーション♪

 

 それらがシェアされていくことに妙な興奮を覚え始めた私は、とうとうシェアリングマスターベーションの鬼へと姿を変えた。

 

 

 そんな私から性犯罪者的なにおいを嗅ぎ付けたのだろうか、ヒッチハイク中、私はとある若手警察官からの職務質問を受けることになる。

 

 

「お兄さん、そこで何してるの?」

 

 

「ヒッチハイクです」

 

 

「おおお!すごいね!ついでにちょっと荷物も確認させてもらっていいかな?」

 

 

「ええ、全然いいですとも、ええ全然」

 

 

 

2・冷静な対応はものすごく大事。ものすんごく大事。

 

善良な市民である私は、快く職務質問を受けた。

 

夢も希望も、愛も勇気も、当然職務も何もない。シェアすることしかできない。私にはもうシェアしかない。そのような動くたんぱく質であるだけの私に、一体何を質問しようというのか。ましてや私の荷物を確認してどうなる?それで世界が平和になるとでもいうのか?

やれやれ、政府の犬も大変でござるな。

 

まあ、好きにしたまえ。

 

私は何も悪いことはしていない。

 

当時宿泊代をケチった私がやっていた悪いことと言えばせいぜい、24時間営業サービスエリアのシャワーステーションにある無料マッサージチェアを一台、夕方から朝7時に至るまで思う存分フル活用していたことくらいだろう。

 

 

 

残念だが、私なんかを職務質問してきた若手警察官、あなた。

あなたのその熱心な職務質問っぷりには心底感心するが、どうやら私はどこからどう見ても善良な市民のようだ。

 

私はこれまでにも何回か職務質問を受けてきたが、ここまで入念に調べる警察官はあなたぐらいだったよ。

 

 

さあ、潔く身を引いてくれ、私はあなたに構っている暇はないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは一体、何かな?」

 

 

 

 

 

先程まで私の荷物をまさぐっていた若手警察官がそっと顔を上げ、したり顔で私の眼球を見て言った。

 

 

 

そしてその手には、

 

 

 

 

 

十得ナイフ。

 

 

 

 

そう。

それは小型ナイフやらはさみやら虫眼鏡やらプラスドライバーやらがコンパクトに収納された多機能マルチツール。紛れもない、岐阜県のドライバーさんから頂いたものである。

 【証拠記事:この世は素晴らしい。

 

ここ日本において、職務質問を受けた人間がナイフを持っていたとなれば、それが如何なる理由であろうとも、とりあえず署までは連れて行かれる。

 

 

 

 

 

 

アーメぇぇぇぇぇぇぇんんんんんn!!!!

 

 

私の頭の中に『銃刀法違反』という五文字が浮かんだ。

 

 

若手警察官はしたり顔で今もなおこちらをじっと見つめている。

 

 

 

 

 

 

フフ、やれやれ。

 

 

一体全体私は一体何を焦っているんだ全体一体。

私は何も悪いことはしていないし、今後も悪いことをしようなどとは一切思っていない本当だ信じて欲しいマジでリアルに、リアルに!

 

 

落ち着け。落ち着けっっっ

 

 

 

動揺を見せれば余計に怪しまれるっ

 

 

 

落ち着くんだ!!!

 

 

 

 

私は冷静かつ必死の挽回を試みる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そsそれ、そそれはどどどおらいばーさんからももももらったものどえ~すn@*lp」

 

 

 

3・取り調べ室とかつ丼

 

私は潔くパトカーに乗り込み、潔く署へと連行される。

 

そして私は、人生で初めて取り調べ室に入った。

 

その閉鎖的な空間はまさに、ドラマや映画で見た空間と全く同じそれであり、自分が現実にその空間にいることの自覚が、多少私の呼吸を乱れさせはしたものの、「本当に私は何も悪いことをしていない」というその圧倒的自信によって、あろうことか私の脳内では、ムシャムシャとかつ丼をむさぼる自分の姿が映し出されていた。

 

 

私は一体どうなるのだろうかという不安と、初めて取り調べ室に入ったという興奮。

相反するその二つの感情が創り出したのは、『かつ丼』という虚像であった。

 

 

しかし突如、私の脳内を突き破るようにして取り調べ室に入ってきたゴリゴリの警察官4、5人の巨体を見た時には、さすがに狼狽した。

 

 

 

狼狽したというか、シンプルにおしっこをもらしそうだった。

 

 

かつ丼は当然出ない。

 

 

 

4・恐怖の尋問とかつ丼

 

重厚なザックを背負い、巨大なホワイトボードを抱え、シェア袋などという訳の分からない袋を携えた珍妙な哺乳類が、ちょこんと椅子に腰かけている。

 

神妙な面持ちで私を見つめながら、巨体の警察官たちは私に対する尋問を始めた。

 

 

 

「君のお財布はなんでこんなに空っぽなの?」

 

 

「あんたなんでそんなに黒く焼けてんの?」

 

 

「ねえねえ趣味とかある?」

 

 

出生から今に至るまでの私の歴史、学校、趣味、特技、住所、電話番号、持ち金、皮膚の色、父の足の匂いなど、それはそれは事細かく、ええ、大変な質問責めをくらいました。

 

 数々の犯罪者たちがここで地獄のような尋問を受け供述してきたことを考えると、恐ろしくてならない。

 

こんなところでかつ丼が喉を通る訳がない。

かつ丼を喉に詰まらせて死ぬのがDEATHテニーだ。

 

5・釈放と教訓とかつ丼

 

今こうしてブログが書けているということは、無事釈放されたということである。

 

 私は全く法律のことは分からないのだけれど、どうやら銃刀法違反となるナイフには長さの基準が定められているらしい。

運よく私の十得ナイフは基準値を超えないものだったために銃刀法には触れず、あくまで厳重注意というかたちで終わった。

 

 

この経験を通して学んだ3つの教訓を、私は全国を旅するヒッチハイカーに伝えたい。

 

 

1、ドライバーさんからは決して鋭利な物体を受け取ってはならないということ。

 

2、取り調べ室に行ってもかつ丼は出ないということ。

 

3、ヒッチハイク中に職務質問を受けても、冷静沈着に、とにかく落ち着いて警察官の質問に答えるということ。

 

 

この3箇条さえ心得ておけば職務質問を受けても大丈夫だし、万が一取り調べ室に入ったとしても、かつ丼が出ないという現実に悶えることもない。

 

大丈夫だ。

旅の健闘を心から祈る。

 

アディオス!

 

 

 

 

 

 ※この記事のノンフィクションパーセンテージはおよそ83%です。